相手を説得するテクニック(一面提示・両面提示)とは?
説得とは、相手の意見や態度を意図的なメッセージを送ることによって変えさせることです。相手を説得するための具体的な働きかけやプロセスを説得的コミュニケーションといいます。
説得には様々な形があり、相手によって、また内容によっても方法は変わってきます。さらに、相手を効果的に説得するためには説得する側の専門的知識や魅力も必要となってきますが、それ以上に重要なのは相手の反応に合わせて適切な条件を用意することです。
人を説得するためには「その時その時でテクニックが必要となる」ということです。ここでは、効果的な説得の方法をいくつかご紹介いたします。
相手を説得するテクニックとは?
①不利な条件は隠しておく
あらかじめ相手に有利な条件で説得してOKをもらった後に、本来の不利な条件を提示して承諾をもらう方法です。
相手を多少なりともだます結果になるので好ましい方法とはいえませんが、送り手の技量次第では話をうまくまとめることができます。
ただし、不利な条件を提示するときに、送り手はよほど言葉巧みに弁明しなければならなくなります。これができないとトラブルになるだけなので、口があまり達者ではない人は使わない方が無難なテクニックといえます。
②プラス情報だけ伝える(一面提示)
受け手側が送り手と同じ考えであるなら、相手に有利な情報だけを伝えるのが効果的な説得的方法です。おすすめするものの長所だけを相手に知らせるのです。これを一面提示と言います。
しかし、受け手が送り手と違う考えを持っている場合、後になってからクレームを入れられる可能性もそれだけ高くなります。場合によっては、受け手が思いもよらない形で反対の方向に意見を変えてしまうブーメラン効果を起こすこともあります。
ブーメラン効果とは?
説得の逆効果。人を説得するつもりが、かえって相手の強い抵抗や反発を招いたり、逆効果に働いてしまう現象のこと。
たとえば、これから勉強をしようと思っていたところに「勉強しなさい」と言われるとかえって勉強する気がなくなってしまうように、説得しようとすればするほど、説得される側が反発して逆効果になる心理現象。
③プラス情報もマイナス情報も伝える(両面提示)
相手からのクレームを避けるためには、はじめからいいところと悪いところの両方を伝えておくことが必要です。これを両面提示といいます。
例えば、ドラッグストアで薬の説明をするとき、薬学の知識をほとんど持っていない一般客の場合は「一番効き目が強いのはこれです」といった具合に薬の効能だけ伝える一面提示が向いているといえます。一方、薬学の知識を一定以上持っている人や自分で物事を決めたがる人の場合は、いくつかの薬のプラス情報とマイナス情報を知らせる両面提示が向いています。
④あらかじめマイナス情報を伝える(接種理論)
ようやく契約を取りつけたにもかかわらず、急に相手が「契約を解消したい」と言い出してくることがあります。受け手が説得に応じた後で考えや態度を変えてしまうのは、どこかで新しい情報を手に入れたり、反対の意見(逆宣伝)を聞かされたりしたことが理由と考えられます。
おすすめするものにマイナス情報がある場合は、はじめからそれを伝えておいてから説得した方がうまくいく場合があります。これは説得の接種理論といい、病気の予防接種と同じように、あらかじめ反対意見に対する免疫や抵抗力を高めておけば、逆宣伝を聞かされていてもむやみに意見を変えたりしなくなります。
相手との距離も影響
このほか、説得の際は相手との距離も重要な要素であることが分かっています。相手から「約50cm」あるいは「約150cm」離れて、「熱心に」あるいは「熱心にではなく」説得し、それぞれの効果の違いを実験で確かめたところ、相手から「約50cm」の距離で熱心に説得した時が最も効果がありました。逆に最も効果が低かったのは、「約100cm」の距離で熱心に説得した時でした。
相手との距離が遠いと「一生懸命のようだけど、あんなに遠くから話しているのはこちらを敬遠しているからだ」と感じてしまうようです。相手に「50cm」程度まで近づいて熱心に伝えることも、説得を説得を成功させる大きな要因であると覚えておきましょう。